『妊娠中、血中エストロゲンは増加し続け、分娩を境に急に低下する。産後にうつになる人が多いのは、エストロゲンの急激な低下による』と習っていましたが、1月末のNHKスペシャルで、なぜエストロゲンがそのように変化するのかについて 新説が紹介されていました。
チンパンジーは出産後の5年間、母親一人で育児をし、その間、次子を妊娠しない方向に進化した。一方、人間は、「体」は繰り返し妊娠できる方向に、「行動」は育児を母一人ではなく大家族や地域社会でおこなう方向に進化した。「体」と「行動」がうまくかみあって、人間は子孫を増やし、繁栄するようになった。分娩後にエストロゲンが低下して不安・孤独感を感じるのも、共同養育を促す仕組みではないか・・・。
ところが、この数十年で核家族化が進み、共同養育の仕組みが崩れ、母親一人にかかる育児の負担が大きくなった。育児中の母が孤独感を感じ、育児の協力者や他者とのつながりを強く求めるのは、進化の末の人間女性の「体」がそれを求めているのではないか・・・。
番組を見て、この新説に私は「納得!」でした。数百万年以上、人間は育児を一人でするのではなく、共同でしてきたのですね。 ひとつの仮説ですが、トピックとしてご紹介しました。
(エコチル京都UC・小児科医/宮嶋 智子)
20160314配信