8月16日の夕刻、京都市を囲んでいる東山、北山、西山に「大文字」「妙・法」「舟形」「鳥居」「左大文字」の送り火が焚かれ、夜空を焦がしました。いつからどのように行われていたのかは明確ではないそうですが、とにかくかなりの昔から、お盆でやってきたお精霊(しょうらい)さんと呼ばれる先祖の霊が、迷わずに冥府にたどり着くために行われている行事だそうです。
京大医学部のキャンパスからは大文字がよく見えますが、私は近くのビルの屋上に上がらせてもらって、生ビールを飲みながら眺めました。前の日に乗りあわせたタクシーの年配の運転手さんから、「大文字さんは送り火ですからね。ビール片手に、なんていうのはだめですよ。手を合わせてお祈りしてくださいね」と釘をさされておりましたので、きちんと手を合わせ、生前ご縁を結んでくださった方々の温情を想いながらお見送りをしました。 そして、自分もいつかはこの火を見ながら冥府に帰るときが来ること、今日生まれた赤ちゃんも数十年後には必ず見送られる立場になることを思うと感慨深く、かすかな秋の気配を含んだ風に吹かれながらビールを飲んでいる今のありがたさを味わいました。さて、その時がくるまで、ご機嫌で働き、一生懸命遊び、精一杯悩んで過ごすことにいたしましょう。(KS 20120820)
如意ケ嶽の大文字(ななめ右から見ているのでKのように見えますが、「大」です)