私は都会育ちですが、子どものころから動植物が好きで、虫やカエルを追いかけたり、動物を飼ったりするのが大好きでした。女性で虫好きは珍しいかもしれませんが、堤中納言物語の一節に「虫めづる姫君」があり、気味悪がる侍女を尻目に毛虫などをこよなく愛する姫が出てきますので、いつの時代にもいるようです。ちなみに、「虫めづる姫君」は宮崎駿さんの「風の谷のナウシカ」のモデルになっているそうです。
それはさておき、私は地球に生まれてきたことの楽しみの一つは、生き物と仲良しになることではないかと思います。犬や猫を飼えなくても、身近な虫や小動物と遊ぶことで、それは可能です。私が子どもの時分に暮らしていた家には猫の額ほどの庭があり、建物に囲まれて日当たりが悪くじめじめしていましたが、アリ、ミミズ、ハサミムシ、ダンゴムシ、コオロギなどが住んでいました。中でも私が好きなのは、大きな石をひっくり返せばもれなくいるダンゴムシです。体長1センチほどのまるっとした体つき、シブいダークグレーのメタリックな輝き、そして危険を察知するとまん丸になって嵐が通り過ぎるのを待つ賢さ。ゴッキーのようにデカくなく、すばしこくもなく、あくまでもつつましやかですので、子どもの遊び相手としてこんなに適した方々は他におりません。「ナウシカ」にでてくる「オーム」も、ダンゴムシをモデルにしたに違いないと確信しております。
というわけで(どういうわけだ)、ダンゴムシ・レースで遊びましょう。
レースの開催は、「日本ダンゴムシ協会」によれば、いたって簡単です。
1)ダンゴムシを探す。じめじめした日陰の石や植木鉢をひっくり返せば必ずみつかります。
2)それぞれに名前をつけましょう。
3)紙または地面に2つの円(内側に小さな円と外側に大きな円)を描きます。
4)内側の円の中にダンゴムシをいれ、レディーゴーです。レース中は選手にさわってはいけません。
5)外側の円に一番早く到達したダンゴムシくん(のオーナー)が勝ちです。
ダンゴムシ・レースを適正に運営するために必要なスキルは、オーナー各人が「ダンゴムシ使い」になることですが、「ダンゴムシを手でつかまずに枝や葉っぱにつかまらせて移動させる」「レースに負けたからといってダンゴムシにあたってはいけない」くらいです。「ダンゴムシの生き方を理解する」は少し難しいですが、仲良しになるには重要なポイントですね。
虫なんぞ見ただけで「ぎゃー」という人も多いと思いますが、小さな生きものを間近で見てみれば意外とかわいらしく、そのしたたかさやはかなさに新たな発見があること請け合いです。子どもたちにとっても、ニンテンドーからは決して得られない不思議さや驚きがあると思います。しゃがみ込んでアリの行列を眺めている子の手を引っ張ったりせずに、子どもが捕まえてきた虫を「気持ち悪い、捨ててこい」なんて言わずに、この際一緒に遊んでみませんか。
(KS 20120910)
ある夏の日の昼下がり、2歳の虫博士ユツキくんとその母ミカちゃんとダンゴムシ・レースをしました。ユツキくんのユズ吉、ミカちゃんのスズ吉、私の吉蔵による真剣勝負(?)は、吉蔵の勝ちでした。私はユツキくんから「ダンゴムシ先生」という、光栄なんだかよくわからない称号をいただきましたが、生きものを通じて自然に対する好奇心を持ち続けてくれたらうれしいです。