今年度、みなさまとご一緒させていただく教員です。
「何故研究者になろうと思ったのか」のエピソードと共にご紹介いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。
中山 健夫(なかやま たけお)
・京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻健康情報学分野 教授
・京都大学大学院医学研究科 エコチル調査京都ユニットセンター センター長
・京都大学医学部附属病院 倫理支援部 部長
・社会医学専門医・指導医
★2017年度よりエコチル調査京都ユニットセンターの3代目のセンター長を担当しています。
私が研究者になるきっかけは、研修医の2年間が終わって、大学の公衆衛生(疫学)の教室に「助手」という立場で就職したことでした。「助手」は今は「助教」と呼ばれていて、研究者の一番若手の立場です。研修後、臨床医ではなく、以前から関心があった公衆衛生に進んだことが、そのまま、研究者になることにつながりました。時々「患者を診ない医者は医者じゃない」と言う方がいますが、「患者を診ないのは臨床医ではないけれども、患者を診なくても、医者の仕事(研究者も含めて)はたくさんある」のです。
もちろん臨床と研究を両立することも(大変ですが)可能ですので、これからの若い医療職の方々には、自分自身の可能性を限定せず、いろいろ広げていってもらえればと思っています。
八角 高裕(やすみ たかひろ)
・京都大学大学院医学研究科 エコチル調査京都ユニットセンター 特定教授
・小児科医師
★京都地区、長浜地区の詳細調査や学童期検査の一部、発達健康相談を担当しています。今後調査研究についても進めていく予定です。
思い返すと、医師になろうと決めたことにも研究を始めたことにも明確な理由はなかったように思います。実家は商売をしていましたがそれを継ぐ必要はなく、高校生になるまで将来の仕事を意識することはありませんでした。ただ、“ずっと勉強ができて新しいことを発見する楽しみがある仕事をしたい”という気持ちがあり、強い思い入れのないまま医学部を目指すことになりました。しかし、医学部での勉強の第一目標は“国家試験に合格すること”なので、覚えるべき内容は多いものの深く考える機会は多くありません。医師になってからの診療もある程度ルーティーン化されており、真面目にやっていれば数年で一通りの事は出来る様になります(外科の手術は別だと思いますが・・・)。出来なかったことが出来る様になることは楽しいのですが、気がつくとあまり勉強しなくなっている事に気付き、“どうしようかな?”と思っていたところに大学院時代の恩師に声を掛けて頂いて研究に携わることになりました。以来、免疫に関わる分子やその異常による病気の研究を続け、時々(数年に一度)見つかる“面白いこと”にハマって25年以上になります。
“木を見て森を見ず”という言葉がありますが、これは医学研究にも当てはまります。木は一人一人の患者さんで、森は全体としての人間です。私の専門はどちらかというと1本の木を深く調べるもので、エコチル調査は全体を大きく見る研究になりますが、どちらが欠けても駄目で両方を上手く融合させることが重要です。1本1本の木を知らずに森を理解することは出来ませんし、森を理解しなければ個々の木を上手く育てることは出来ません。木と森を上手く育てられるような研究を続けていくことが今の目標です。
渡部 基信(わたなべ もとのぶ)
・同志社大学 赤ちゃん学研究センター 副センター長
・エコチル調査京都ユニットセンター 副センター長
・南京都病院小児科医師
・臨床心理士
★木津川地区の詳細調査や発達健康相談を担当しており、エコチル調査の追加調査として、睡眠リズムの研究を行なっています。
正直に言うと研究者になろうと意識したことはあまりありません。しかし、日々小児科医師として働く中で、病気の診断に至る過程は、研究とよく似ている気がします。診断が難しい病気の場合、テキストや過去の文献を調べます。古い文献や過去の診療記録・データが鍵になることもあります。仮説を立て病気の的を絞り、診断に必要な検査を選択します。検査の多くは仮説に否定的な結果になることも多いのですが、除外診断と言って1つ1つ候補を除外し病気を絞っていくことも重要です。
名医のような豊富な経験や優れた洞察力はもちろん大切ですが、真実を求める熱意がもっとも必要です。医師の研究者は大勢いらっしゃいますが、職業がら探究心が必要なことも関係しているかもしれません。私の場合、最近研究に対する探究心が少しご無沙汰気味なので、もう少し頑張りたいと思います。
金谷 久美子(かなたに くみこ)
・京都大学大学院医学研究科 エコチル調査京都ユニットセンター 特定講師
・内科医
★京都地区、長浜地区の学童期検査を担当しています。学童期検査では追加調査 「骨密度の測定」を実施しています。
「気がついたら、なっていた・・・」
娘がぜんそくで、黄砂がくるとどうも調子が悪くなる気がする、、
うちの娘だけなの? 私の思い込み??
もし本当に、黄砂でぜんそくが悪化するなら、患者さんに教えてあげるだけで無用な苦しみが減らせるのでは、、
そう思って、調査をしたのがきっかけです。
まさか10年以上も研究を続けることになるとは、その時は夢にも思いませんでした。
調査では「黄砂がっておっしゃるお母さん、確かにいるから・・」と、小児科の先生がぜんそくの入院数のデータを集めてくださったり、黄砂ってそもそも何なのか、どうやって測るのかを、
大気の専門家の先生が、素人の私にも熱意を持って教えてくださったり、本当にたくさんの方のご厚意と英智をいただきました。
研究って、こんなに温かくて自由で楽しいものだったんだと感動し、ちょうどエコチル調査が始まったこともあり、「ぜんそくの子だけ?」「何が感受性を決めてるの?」とさらに詳しい調査へと進むことができました。
気づいたらもう15年・・「研究者」というカテゴリーに分類される立場になっておりますが、本当に幸せだなぁと思います。
平林 今日子(ひらばやし きょうこ)
・京都大学大学院医学研究科 エコチル調査京都ユニットセンター 特定講師
・専門社会調査士
★2014年、最後のエコチルキッズが生まれた年からエコチル調査に携わるようになり、広報関連や情報管理、加えて長浜地区での調査の推進等を担当しています。学童期検査の追加調査「女性の就労と子育てに対する認識について」も実施しています。
私が10代の頃、東西冷戦が終結しました。ベルリンの壁崩壊の映像が繰り返しテレビ等で放送され、平和な世界が訪れたかのように見えたのもつかの間、これまで冷戦の陰に隠れて見えていなかった様々な問題が浮き彫りとなり、冷戦終結で不要となったはずの核兵器の廃絶も遅々として進まず、むしろ拡散しつつある現状が明らかになりました。皆が幸福で平和な社会を望んでいるのに、なぜそうならないのか。それが知りたくて研究の道を志しました。
エコチル調査とは一見関連のない問題のように見えますが、子どもたちが健やかに成長するための環境を整えることは、平和な社会構築のための重要な基盤であると考えています。次世代が安心して幸せに生きることのできる社会をつくるために、その実現を妨げている要因を探り、問題提起を行えるよう、微力ながら尽くしたいと思います。
中山 健夫(なかやま たけお)
・京都大学大学院医学研究科 社会健康医学系専攻健康情報学分野 教授
・京都大学大学院医学研究科 エコチル調査京都ユニットセンター センター長
・京都大学医学部附属病院 倫理支援部 部長
・社会医学専門医・指導医
★2017年度よりエコチル調査京都ユニットセンターの3代目のセンター長を担当しています。
私が研究者になるきっかけは、研修医の2年間が終わって、大学の公衆衛生(疫学)の教室に「助手」という立場で就職したことでした。「助手」は今は「助教」と呼ばれていて、研究者の一番若手の立場です。研修後、臨床医ではなく、以前から関心があった公衆衛生に進んだことが、そのまま、研究者になることにつながりました。時々「患者を診ない医者は医者じゃない」と言う方がいますが、「患者を診ないのは臨床医ではないけれども、患者を診なくても、医者の仕事(研究者も含めて)はたくさんある」のです。
もちろん臨床と研究を両立することも(大変ですが)可能ですので、これからの若い医療職の方々には、自分自身の可能性を限定せず、いろいろ広げていってもらえればと思っています。
八角 高裕(やすみ たかひろ)
・京都大学大学院医学研究科 エコチル調査京都ユニットセンター 特定教授
・小児科医師
★京都地区、長浜地区の詳細調査や学童期検査の一部、発達健康相談を担当しています。今後調査研究についても進めていく予定です。
思い返すと、医師になろうと決めたことにも研究を始めたことにも明確な理由はなかったように思います。実家は商売をしていましたがそれを継ぐ必要はなく、高校生になるまで将来の仕事を意識することはありませんでした。ただ、“ずっと勉強ができて新しいことを発見する楽しみがある仕事をしたい”という気持ちがあり、強い思い入れのないまま医学部を目指すことになりました。しかし、医学部での勉強の第一目標は“国家試験に合格すること”なので、覚えるべき内容は多いものの深く考える機会は多くありません。医師になってからの診療もある程度ルーティーン化されており、真面目にやっていれば数年で一通りの事は出来る様になります(外科の手術は別だと思いますが・・・)。出来なかったことが出来る様になることは楽しいのですが、気がつくとあまり勉強しなくなっている事に気付き、“どうしようかな?”と思っていたところに大学院時代の恩師に声を掛けて頂いて研究に携わることになりました。以来、免疫に関わる分子やその異常による病気の研究を続け、時々(数年に一度)見つかる“面白いこと”にハマって25年以上になります。
“木を見て森を見ず”という言葉がありますが、これは医学研究にも当てはまります。木は一人一人の患者さんで、森は全体としての人間です。私の専門はどちらかというと1本の木を深く調べるもので、エコチル調査は全体を大きく見る研究になりますが、どちらが欠けても駄目で両方を上手く融合させることが重要です。1本1本の木を知らずに森を理解することは出来ませんし、森を理解しなければ個々の木を上手く育てることは出来ません。木と森を上手く育てられるような研究を続けていくことが今の目標です。
渡部 基信(わたなべ もとのぶ)
・同志社大学 赤ちゃん学研究センター 副センター長
・エコチル調査京都ユニットセンター 副センター長
・南京都病院小児科医師
・臨床心理士
★木津川地区の詳細調査や発達健康相談を担当しており、エコチル調査の追加調査として、睡眠リズムの研究を行なっています。
正直に言うと研究者になろうと意識したことはあまりありません。しかし、日々小児科医師として働く中で、病気の診断に至る過程は、研究とよく似ている気がします。診断が難しい病気の場合、テキストや過去の文献を調べます。古い文献や過去の診療記録・データが鍵になることもあります。仮説を立て病気の的を絞り、診断に必要な検査を選択します。検査の多くは仮説に否定的な結果になることも多いのですが、除外診断と言って1つ1つ候補を除外し病気を絞っていくことも重要です。
名医のような豊富な経験や優れた洞察力はもちろん大切ですが、真実を求める熱意がもっとも必要です。医師の研究者は大勢いらっしゃいますが、職業がら探究心が必要なことも関係しているかもしれません。私の場合、最近研究に対する探究心が少しご無沙汰気味なので、もう少し頑張りたいと思います。
金谷 久美子(かなたに くみこ)
・京都大学大学院医学研究科 エコチル調査京都ユニットセンター 特定講師
・内科医
★京都地区、長浜地区の学童期検査を担当しています。学童期検査では追加調査 「骨密度の測定」を実施しています。
娘がぜんそくで、黄砂がくるとどうも調子が悪くなる気がする、、
うちの娘だけなの? 私の思い込み??
もし本当に、黄砂でぜんそくが悪化するなら、患者さんに教えてあげるだけで無用な苦しみが減らせるのでは、、
そう思って、調査をしたのがきっかけです。
まさか10年以上も研究を続けることになるとは、その時は夢にも思いませんでした。
調査では「黄砂がっておっしゃるお母さん、確かにいるから・・」と、小児科の先生がぜんそくの入院数のデータを集めてくださったり、黄砂ってそもそも何なのか、どうやって測るのかを、大気の専門家の先生が、素人の私にも熱意を持って教えてくださったり、本当にたくさんの方のご厚意と英智をいただきました。
研究って、こんなに温かくて自由で楽しいものだったんだと感動し、ちょうどエコチル調査が始まったこともあり、「ぜんそくの子だけ?」「何が感受性を決めてるの?」とさらに詳しい調査へと進むことができました。
気づいたらもう15年・・「研究者」というカテゴリーに分類される立場になっておりますが、本当に幸せだなぁと思います。
平林 今日子(ひらばやし きょうこ)
・京都大学大学院医学研究科 エコチル調査京都ユニットセンター 特定講師
・専門社会調査士
★2014年、最後のエコチルキッズが生まれた年からエコチル調査に携わるようになり、広報関連や情報管理、加えて長浜地区での調査の推進等を担当しています。学童期検査の追加調査「女性の就労と子育てに対する認識について」も実施しています。
私が10代の頃、東西冷戦が終結しました。ベルリンの壁崩壊の映像が繰り返しテレビ等で放送され、平和な世界が訪れたかのように見えたのもつかの間、これまで冷戦の陰に隠れて見えていなかった様々な問題が浮き彫りとなり、冷戦終結で不要となったはずの核兵器の廃絶も遅々として進まず、むしろ拡散しつつある現状が明らかになりました。皆が幸福で平和な社会を望んでいるのに、なぜそうならないのか。それが知りたくて研究の道を志しました。
エコチル調査とは一見関連のない問題のように見えますが、子どもたちが健やかに成長するための環境を整えることは、平和な社会構築のための重要な基盤であると考えています。次世代が安心して幸せに生きることのできる社会をつくるために、その実現を妨げている要因を探り、問題提起を行えるよう、微力ながら尽くしたいと思います。
2024年4月1日更新