「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査※1)」は日本中で10万組の子どもたちとそのご両親にご参加いただき、環境省が2011年より実施している大規模な疫学調査です。生活環境の中にある様々な物質が子どもたちの健康や成長・発達にどのような影響を与えるのかを明らかにし、未来の子どもたちの環境改善を実現することを目指しています。
※1「エコロジー」と「チルドレン」を組み合わせて「エコチル調査」です。
1:背景
近年、ぜんそくや肥満、発達障害などの疾病が増えているといわれています。科学や技術が急速に発達し、私たちの暮らしは便利になりましたが、それに伴い、さまざまな化学物質も身の回りに増えました。 人間が創り出した物質が、私たちの健康や子どもたちの成長や健康に影響を及ぼしているのか、どのような影響があるのか、などについては、まだ詳しくわかっていません。特に、子どもたちは成長段階にあり、身体ができあがっていないため、大人より化学物質の影響を受けやすいと考えられています。
また、疾病の多くは、環境中の物質、生活習慣、遺伝的な性質などが関係しあって起こります。 これらの関係を明らかにすることができれば、病気の予防に役立つ政策を立てたり、子どもたちが健やかに育つための環境を整備したりすることができます。 子どもたちや次の世代の人たちに健康で豊かな生活をしてもらうためには、今から対策を考え、 問題があればそれを改善していかなくてはなりません。
そこで、エコチル調査では、生活環境の中にある物質(空気や水の中の化学物質、ダニなどのアレルギー物質など)が、子どもたちの健康や成長発達にどのような影響があるのかについて調べています。
2:調査方法
子どもたちと環境中の物質の関係を調べるには、数多くのお子さんの成長する過程を長期的に追跡してデータを集め、分析する必要があります。このため、全国の15地域で10万人の妊婦さんのご協力を得て、赤ちゃんがお母さんのおなかにいるときから生まれて13歳になるまで、定期的に健康状態を調査しています。
調査は2011年に開始され、最初の3年間で妊婦さんの登録を行いました。京都ユニットセンターでは3982組の親子のみなさまにご登録いただき、現在も多くの方と共に調査を継続しています。
追跡期間は13年間を予定してきましたが、みなさまのご協力のおかげで、国民の健康や環境の向上に広く役立つ多くの成果が得られつつあり、思春期以降に発症する病気やお子さんの次の世代への健康影響などを明らかにするために、13歳以降も調査を続けることが必要と判断されました。これをうけて、環境省及び国立環境研究所では、お子さんが小学校卒業後の調査について調査計画を作成しています。
3:研究成果
これまでに参加者のみなさまからいただいたデータより、既に多くの成果があげられていますので、ぜひご覧ください。
●環境省「エコチル調査」HP(全国版)
「調査からわかったこと」http://www.env.go.jp/chemi/ceh/results/index.html
※上記のページで「成果発表一覧」や「成果紹介パンフレット」(「対話事業」>「成果紹介パンフレット」)を見ることができます。
●京都ユニットセンター「エコチルどすえ@京都」HP
「どんなことが見えてきたの?-エコチル調査成果より・身近な話題を感謝にのせて―」
https://ecochil-kyoto.jp/contents/wp-content/uploads/2022/03/kyotoUC-seika-2021-B.pdf
エコチル調査には、妊娠中から参加者全員にご協力いただいている「全体調査」と、一部の方にお願いしている「詳細調査」があります。 また、ユニットセンターが独自の計画・予算で参加者の方にお願いしている「追加調査」や、お子さんが対象疾患になられた場合に医療機関にご協力をお願いしている「疾患情報登録調査」があります。 各調査で参加者の方にお願いしていることを以下にご案内します。
1:全体調査の内容(対象:参加者全員)
妊娠中から産後(生後)1か月までの間、医療機関にて血液・尿の採取や医療情報の転記をさせていただきました。母乳や髪の毛もご提供いただき、生体試料としてコアセンターで保管しています。
京都ユニットセンターでは2023年2月末の時点で、3695組の親子のみなさまがエコチル調査を継続くださっています。
■ 質問票調査: | 妊娠中からお子さんの就学期まで、半年に一度の質問票調査への回答をお願いしてきました。お子さんの就学期以降は1年に2回(お子さんの誕生日ごろと、学年ごと)質問票をお送りしています。お子さんが10歳になる年以降はお子さん自身にご回答いただく「子どもアンケート」も行っています。 |
■ 学童期検査: | 小学2年生と小学6年生の年には、お子さんに直接検査会場にお越しいただき、成長・発達についての調査を行っています。 ●学童期検査の詳細についてはこちらをご覧ください。 |
■ 乳歯調査: | 脱落乳歯のご提供にご協力をお願いしています。(乳歯回収は小学4年生時) ●乳歯調査の詳細についてはこちらをご覧ください。 |
■ ゲノム遺伝子解析研究: | ご提供いただいた生体試料の化学物質の量や、質問票調査等でご回答いただいた健康や成長に関する情報などと、ゲノム情報、遺伝子情報などとの関係を検討します。 ●ゲノム遺伝子解析研究の詳細についてはこちらをご覧ください。 「ゲノム遺伝子解析研究」(外部リンク) https://www.nies.go.jp/jecs/about/about/genomics.html 「ゲノム遺伝子解析研究について(説明書)」(外部リンク) https://www.nies.go.jp/jecs/about/about/sf3hl60000006jhv-att/genome_instructions_s.pdf |
詳細調査は全国10万人の参加者のうち、無作為に選ばれた5000人のお子さんを対象として行っています。京都ユニットセンターでは2023年2月末の時点で185人のお子さんに調査を継続いただいています。
■ 訪問調査: | 研修を受けたエコチルスタッフ(2名程度)がご家庭を訪問し、生活環境中の化学物質やハウスダスト等を採取しました。 |
■ 医学的検査: | お子さんに2歳ごとに検査会場にお越しいただき、健康状態や成長・発達について、小児科医が直接診察します。(血液検査があります) |
■ 精神神経発達検査: | 2歳、4歳では専門の検査者が面談での検査を、8歳ではパソコンやiPadを用いた検査を行い、10歳では、再び専門の検査者による面談での検査を予定しています。12歳では、8歳と同じようにパソコンやiPadを用いた検査を実施する予定です。 |
※13歳以降調査における詳細調査の実施については現在検討が進められています。
生後6か月以降の質問調査票の中で、お子さんが下記の疾患と診断されたことを教えていただいた場合、受診されている医療機関より病気に関する詳しい情報の提供にご協力いただく調査です。
川崎病、先天異常等、てんかん・けいれん、小児がん、内分泌・代謝異常、精神神経発達
ご協力により得られた結果は、子どもたちの健康と環境についての研究データとして、大切に活用いたします。
ユニットセンターが独自の計画・予算で参加者の方にお願いしている調査です。
●京都ユニットセンターで行っている「追加調査」につきましてはこちらをご覧ください。
2023年4月1日更新